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99 :iNAO五段:2015/09/23 00:34:51 ←送る |
【秋に笑む】
秋の夕暮時、河原沿いの土手を歩くT氏の目の前を、オニヤンマが通り抜ける。思わず背を仰け反らせたが、既に姿は遠い。
T氏が目で追うと、オレンジ色の空を背に緑色の体がよく目立っていた。翅を震わせて飛ぶ姿にT氏は見とれる。
やがてオニヤンマは河原に生えているススキの一本に止まった。T氏はゆっくりとそこに近づく。
彼が右手の人差し指をオニヤンマに向けると、それは頭を少し傾けた。警戒されていないことを確信し、指を回転させる。その動きに合わせてオニヤンマの頭が左右に傾いた。
そしてT氏は左手をオニヤンマの体に近づける。
だが、翅に触れようかというところでオニヤンマは飛び去ってしまった。指は代わりにススキの穂を掴んでいる。
見回すと、オニヤンマは彼の周囲を旋回していた。そして彼がその姿を捉えたのを確認したかと思うと空中で横に回転し、天に腹を向けながら落下する。
T氏が目を瞬かせる間にオニヤンマは再び姿勢を戻し、弧を描いて夕日を背に飛び去って行った。
それを見届けた彼は、照れ隠しに頭を掻いて土手を上る。なんとなく、あのオニヤンマに笑われた気がしたのだ。 |
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