299 :なのはな八段(CEU):2015/05/29 02:03:47 ←送る |
同窓会の窓が開きかけて閉じた
ハガキで同窓会の知らせが来るなんて初めてだった。今までの僕の経験だけど、高校や中学の友達から電話きて、「最近どう?」とかから始まって近況伝えて「最近誰かと会ったよ」なんていう話をして、「あいつ元気にしてた?」とか言って「同窓会やるからいつ空けといて」とか言われて「行く行くーじゃあねー」だったから、ハガキには驚いた。内容には保育園の時の同窓会の知らせだったから、そこでやっと納得した。携帯電話なんて当時ないし、電話してきたとしても「最近どう?」なんて聞かれたら遡って小学生の頃から話さないと辻褄が合わないだろうし。初対面より厄介だ。でも、なぜか笑えた。うっすらと思い出したのは手紙の差出人の顔がぼんやりおもいだしたから。ああ、痩せててメガネをかけてたコだったなと。
当日、15人くらいが集まった。安心したのは、当たり前だけど全員タメ語だったこと。顔をあんまり覚えてない同士が思い出しながらタメ語でわいわいと、手探りで飲んでるのは異様な感じでおもしろかった。時間が経って酒が入ってネタも尽きて青いシャツを良く着ていたよねーって話にはさすがに苦笑いだったけど。
「覚えてる?園の門で待っててくれて遊びの輪に入れてくれたよね。」
美人だけど誰だか覚えていないコが僕に言ってきた。やっと思い出した。病気がちな子だ。保育園のほとんど休んでいたけど時々来る子だ。門で待ってて一緒に遊んだことを思い出した。ドキッとしたのはきっと美人だったからだと思う。「うん。覚えてるよ」
次の日仕事だったから、みんなとそのコと電話番号を交換して1次会で帰った。帰ってからちゃんとそのコにはメールした。
次の日の夜、そのコから同窓会に居たイケメンと付き合ったと電話が来た。
とりあえず、僕は笑っといた。
「同窓会の窓が開きかけて閉じた」終わり |
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324 :iNAO五段(XOA):2015/06/02 20:47:58 ←送る |
恋と愛
「先生。質問があります」手を上げて女生徒が言った。「恋と愛の違いとはなんでしょうか?」
塾講師のJ氏は目を細めて彼女を睨んだ。「今は授業をしているはずなんだがね」
「気になることはいつでも訊けと先生は言ったじゃないですか」女生徒が言った。
J氏はため息を吐く。「答えたら、おとなしく授業を聞くか?」
女生徒は小さく二回頷いた。J氏は教科書を教卓の上に伏せて置く。
「恋は待つ、受けている状態。気になっている相手からのレスポンスを期待しているわけだ」
「ふむふむ」
「愛は与えるもの。気になっている相手の反応がなくても成り立つ。レスポンスを期待していない」
「つまり、私からのレスポンスを期待していない先生は私を愛してくれているということですね!」女生徒が言った。
「そもそも俺はおまえを気にしてない。逆に、俺からのレスポンスを期待しているおまえは俺に恋してるってことになるが」
「ええ。もちろん」女生徒は満面の笑みを浮かべた。「だから先生、早く私を気にかけてくださいね?」
J氏は無言で教科書を掴むとホワイトボードに向き直る。少しづつ、彼女の笑顔が気になり始めていた。
恋から愛になるのか、愛の中に恋があるのか……。 |
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